第3章 激動の序章曲
轟「なぁ、お前が嫌じゃなければ…俺のために歌を歌ってくれないか」
という、なんとも熱烈な発言にこたえまして。
あれから雨が降ってない限り、お昼休みには屋上にやってきて歌を歌うことが習慣となっていた。
彼は私の歌のどこを気に入ったんだろう…。
でも、私を歌を聴いた後の彼は何となく、すっきりとした、どこか吹っ切れたような表情をしている。だから、断るにも断れなかった。それから数日後の午後の授業。
午後の授業はヒーロー基礎学。ヒーローの基礎を学ぶといっても過言ではないこの授業。前回は戦闘訓練だった。
そして今回は、人命救助訓練。
訓練場は少し離れているらしく、バスで向かう。
後ろの席のほうに座ると、轟君が隣に座る。そしてなぜか前の席の爆豪がギロリとこちらを睨み、「あ゛?」となぜかガンを飛ばされた。
なぜだ。何もしていないぞ。
けれど、轟君にはそんなのおかまいなし。私の隣の席に座ったかと思えば、肩に重みがかかる。
轟「眠いから、少し寝る。」
うん、寝るのはわかった。なんで肩に寄りかかってるのかなぁ?!
あ、これは肩を貸せっていう暗黙の了解?!
そんなこと露も気にせず、クラスの話題はそれぞれの個性についてに移っていく。
梅「あら、そういえば優雅崎ちゃんの個性って歌だったかしら?」
私の個性の話となり、一斉に私のほうを向く。そしてみんな一斉に固まる。かと思えば、黄色い歓声から怒号(爆豪)まで、さまざまな声が一斉に響く。
八「そっ、そんなふしだらな!」
芦「なになにっっ?!カップル誕生?!」
百さんは頬を赤らめながら、乙女の反応をされ、美奈ちゃんからは冷やかされる。そして何より一番驚きたいのは、この歓声やら怒号やらが飛び交う中で平然と寝ていられる轟君。
一体そんなのいつの間に身に着けたんだ。
苦笑いをしていると、前の席に座っていた爆豪がこれ以上ないほど、眉間にしわを寄せ、青筋を立てていた。
爆「てめぇ、ふざけんなよ…!」
((めっちゃ怒ってる!!))
先ほど、クソを下水で煮込んだような性格、と上鳴くんに評されていた彼が。今、なぜかこれ以上ないほどに怒っている…。
「お前ら、もうすぐ着くからいい加減にしろ…。」
そして相澤先生も怒っていた。