第3章 激動の序章曲
『えっと…』
え、これずっと聞かれてたやつだよね。
『と、特に異常とかない?』
?「?何もないが…。」
彼は表情を変えることはなかった。とりあえず、見る限りでは何ともなさそうだ。
『そ、そう、ならいいんだけど…。』
良かった、と思わず安堵する。
すると、じっと私のほうを見ていた彼。
?「…優雅崎の歌、良かった。」
特に表情を変えることなく感想を述べる。特に何も変調がないのなら、普通に聞けるレベルだったんだな…。と、思い『ありがとう』と笑顔で述べる。
『や、歌でいいよ。苗字あんまり好きじゃないし。』
?「そうか、じゃあ歌って呼ぶ。」
『うん…ごめん、名前聞いてもいい?まだ覚えてなくて…。』
轟「あぁ、俺は轟焦凍。」
恐る恐る名前を聞くと嫌な顔せずに教えてくれた。…というか、表情筋があまり動かないのか表情がほとんど変わらず。
『轟君ね…、うん、覚えた。』
とりあえず、彼の名前を覚えることができた。すると、今まで後ろの日陰のほうにいた彼が私の隣までやってくる。そして、空を仰ぎ見る。
…隣で見ると、彼の顔の傷が際立って見える。
でも、それを含めてきれいだった。
『…きれい。』
轟「えっ」
『え?…あっ!』
気づいた時には、すでに遅し。彼の耳に入ってしまったらしい。
轟「……変な奴。」
ふっと、はじめて彼が笑った。否、初めて表情筋が動くところを見た…といった方が正しいだろうか。
『へ、変な奴とは失礼な!』
轟「俺のこの顔を見てきれいっていうやつ初めてだ。」
『だって、きれいだったんだもの。』
ちらっと、彼の顔を覗き見るようにすると轟君は、先ほどよりも柔らかな表情で空を仰ぎ見ていた。