第2章 始まりのアレグロ
【歌side】
気が付いたら、見慣れない天井が広がっていた。
『えーっと…あれ?』
私、確か個性把握テスト終わってからどうしたんだっけ…。
ゆっくりと記憶をめぐらす。
『って!私、言霊発動させたんだっけ?!』
うわああぁ、なんてことしちゃったんだろう?!勢いよくベッドから飛び上がってカーテンを開けるとそこにいたのは、妙齢ヒロイン・リカバリーガールと担任の相澤先生がそれぞれ椅子に座っていた。
リ「おや、目覚めたようだね。」
『あっ、お、おはようございます…。』
相「…まったく、お前は…。」
リカバリーガールはやさしく声をかけてくれたが、担任様はどうもそうはいかないらしい。
かつかつ、と近くまで来ると、がしりと、頭をわしづかみにした後、ぎりぎりと思いっきり力を入れてきた。
『いたっ!いだだだだっ!痛いっす!』
相「俺がお前の個性止めてなければ暴走してたんだぞ、わかってんのか。あぁ?」
『わかってます、わかってますから!そんなに力入れないでっっ!!割れる!!』
さすがに、相澤先生の見ただけで人の個性を消すことができる個性には、私の歌魂…もとい言霊にはかなうはずもなく。こうして、鉄拳制裁を丸腰状態で受けているわけである。
リ「ほっほっほ」
えっちょ、リカバリーガール、笑ってないで助けてよ…!
相「お前は今後、自分に個性は一切使うな。」
『えっ、てか私、除籍処分じゃないっ?!』
相「あぁ、あれは嘘だ。」
『嘘っ?!』
相澤先生から聞かされた真実に、私は一体何のために自己を犠牲したんだろう…。
突然、脱力感に飲まれた。
こうして、私の高校生活、初日は過ぎていった…。