第2章 始まりのアレグロ
相「優雅崎。」
目の前が真っ暗になったような感覚に襲われたとき。
担任の相澤先生が声をかける。
相「お前の個性を一旦消させてもらった。」
『消すって…先生の個性で?!どうして?!』
相「お前は自分の個性の使い方が現時点では非常にうまい。だから合理性に欠ける使い方を見ていられなかった。」
『合理性に欠けるって…』
どういうことよ、と怒鳴りかけた時。
緑「歌!」
観衆のほうから、私の名前を呼ぶいっくん。いっくんは私より先に全種目の測定が終わっており、右手の人差し指が痛々しいことになっていた。
そして、いっくんは泣きそうな顔をしていた。
その顔を見た瞬間、セピア色の記憶が頭の中に濁流のように流れてきた。
そして気づいた時には、ある言葉をつぶやいていた。
『ルダンジャール ロム マヤン』
誰かの泣き顔を見るのは、もうこりごりだ。
ましてや、いっくんの泣き顔なんて二度もごめんだ。
気づいた時には、自分で自分のストッパーを外していた。