第2章 始まりのアレグロ
【緑谷side】
かっちゃんが歌に話しかける姿が見えた。
かっちゃんは、いつものようにけんかを吹っ掛けるわけではなく、沈んだ表情で何かを言いたげだった。
クラス中、歌を含めたみんなが疑問を抱いた。
……僕を除いては。
きっとかっちゃんは「自分に個性を使うな」と言いたかったのだろう。
それは、幼いころにもたらした残酷な記憶。
歌は覚えてないみたいだけど…。あの日、あの時、物陰に隠れながらも、しっかりとみていた。
あの日、何が起きたか。
あの日、だれに殺されたのか
あの日…、歌の能力の真実を。
そしてその悪夢が再び起きぬように、かっちゃんなりに配慮した結果なんだろうな…。
ともあれ、僕も人の心配より自分の心配だ。
1か100しか使えない僕もある意味、除籍処分に最も近いのだから…。