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漂流者案件承ります。〜女主人の細腕宿飯日記〜

第2章  弍〜商談〜


この世界の理や常識を学ぶ事10日ーーーーー
普通は、通訳として魔術結社の札を使うのだが『女性にお札は無粋ですから』と言う理由で、ラピスラズリの小さなピアスを渡された。
付けた瞬間に言葉が理解出来る様になり、世界が広がっていく感覚が身体を駆け巡る。

文化、文明、人種、生活、etc…あまりに違い過ぎて目眩を起こしそうだが、知らない事を理解出来る事には快感が伴う
知的好奇心が旺盛な人間にとっては幸せな環境なのかもしれない。


必要な知識を学べば、今度はシャイロックに質問されていた。
日本での知識や技術、自分の特技や資格、趣味、好き嫌い、家族や友人の事……

色々と聞き出される中、時折笑みを含みながら考え込むシャイロックを見る時、少しだけ怖くなる。
そしてそれは特大の問題を渡される事の前触れであったーーーー


心地良い朝だった。柔らかな日の光がカーテンの隙間から部屋を照らす。
身支度を整えていると、ノックが響く。開ければシャイロックが満面の笑みを浮かべている。



「おはようございます。如何なさいました?」

「おはようございます。明日、オルテの貴族との交渉があるんですが、その後の会食のセッティングをお願いしたいのです。」

驚きのあまりに声が出ない。あまりに大それた事を平然と言ってのける。


貴族相手に会食など面倒ごとしかない。だが交渉と言うのだから、大きな話なんだろう…
その貴族の年は?性別は?甘党か辛党か?好みは?アレルギーの有無は?

ぐるぐると考えは巡る中、気がつけばシャイロックの服を掴んでいた。


「そのお客様の事を詳しく教えて下さい。」
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