第17章 五番街のマリーへ/ポルナレフ
あの男は探しびとの本名を教えたのだとおもっていたが、もし彼女が、仕事で用いた名前で当時しられていたとしたら? おれは帰りのバスで、そうかんがえていた。彼は、探しやすいだろうとかんがえ、おれに「女性名」という名のほうを、あえて教えたのかもしれない。
窓のしたに石畳が後方へと流れ去ってゆき、ふと見上げる標識は、つぎの街を告げている。
あの街から遠退いてゆく。遠退くほどに、友だちになれたあの女性名という女の子のことばや、笑顔が、こころに甦り、おれはまたあの街を訪れることになるかもしれないと、なんとなくおもわされた。
なん十年もまえに、過去の物語は終わっており、そこにはあの子も、もちろんおれも、いはしない。おれはきょう、その物語の息の根を止めに街へ向かったのだ。だがつぎには、新たな物語に出会いにゆくことになるのだろう。
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五番街ってマンハッタンだもの…アメリカと関係あるキャラに出向いてもらおうか…ともかんがえましたが、マリーといえばフランスの名前という印象が先立ったのでポルナレフを選びました。この小説の街はマンハッタンではなくフランスのどこかというわけです
ちなみに踊り子という設定は「五番街のマリーへ」とおなじバンドの前作「ジョニィへの伝言」から