第1章 恋をするなら木星で/億泰
するとゲラゲラ笑われるから、もうなんでもいいやという気になって、カルピスがもらえるなら、そういううわさもわるくねぇなとおもい直しつつ、ふたりで歩き出す。
「これから毎日カルピスをタダでもらえるのかもなあ」
「販売機では売り切れだけどね」
「そうなんだよなあ!販売機で買うところからカルピスのおいしさは始まってるのに」
「でも女子からもらえるのもおいしいとおもうわ」
「…それはいえてるかも」
「…このごろ、わたし気が遠くなってすっ転んだり、周りから影が薄いっていわれたりしてなんだか憂鬱だったけれど、虹村くんのパワーでもういいこと起きたみたい」
「ほんとかよ?! おれまだ缶開けてもいないのに! どんなッ?」
「虹村くんと話せたし」
「……仗助の友だちと話せたもんな」
「意外とヒクツだね…たしかにハーフのジョジョはなにもかもカッコいいけど、わたしはダンゼン虹村くんのファンよ」
勝手口までたどり着くころ、うわさをすれば向こうに仗助が見えるので、膝を診てもらいに保健室へ寄る女性名とおれは別れた。
女性名のすがたが見えなくなると、きょうはじめて話したばかりなのに、すごいことをいわれたと、いまさら恥ずかしさが噴出する。
いくらおれの声がおおきくたってそんなくだらないせりふ覚えるもんか? 仗助じゃなくておれのこと見てたってこと? ていうか、おれのほうが好みだってハッキリいってたもんな…!
すると、あいつがコケたとき盛大にパンチラしていたような、そんな記憶が甦る。
ひとを幸せにするとおれも幸せになれるんだな…しみじみそうおもいながらカルピスの缶を開けると、カルピスもすごい勢いで噴出した。