第38章 私立リアリン学園!15時間目~ミシェル~
「私もそう思います」
「え?」
フフフと小さく笑っているミシェル。
「幼い頃から、おばあさまが、策を講じて勢力を拡大していく様を見てきました。その姿は、まさに魔女でしたよ」
「あ、はあ」
私にでも想像できる光景だな。
なんにしろ、助かった。
「私は、おばあさまからの期待を一身に受けています。アードラー家のためにも、私が頑張らないと」
「ヨハンナ夫人に何を言われたの?」
ミシェルは、フルフルと首を横に振る。
「おばあさまは、何も言いません。昔からそうです。ですが、おばあさまの言わんとすることは、わかります」
こらえきれずといった様子で、ハラハラとまた涙が、こぼれ落ちる。
職員室でヨハンナ夫人と会った時のミシェルは、いままでに見たことないほどの笑顔だった。
よほど嬉しかったのかと思っていたけど。
大きな勘違いだったんだ。
ジル教頭の不自然に間のあいた相槌もそういうことだったんだね。
あの笑顔は作り物で、ヨハンナ夫人の前では、かわいい孫娘を演じているってこと。
まあ、確かに、あの人がおばあさまなら、私だって愛想よく取り繕うだろうな。
由緒正しき公爵家の孫娘となれば、それなりの振る舞いをしなければいけないのだろう。
幼い頃から気遣いながら生きてきたのかな。
そうして、まったく笑うことのないミシェルが、できあがってしまったのかな―――。
肩を震わせて泣く小さな姿は、ただの一人の女のコだ。