第34章 私立リアリン学園!13時間目~レイヴィス~
「なあ、レイヴィス。俺は、これからどうしたらいいと思う?」
先ほどと同じ質問が繰り返される。
「………現状維持、ですかね。とりあえず、穏便に」
ゆっくりと、USBメモリを鞄にしまう。
そうだ、このまま、今まで通りに過ごす―――それが、一番平和だ。
気を取り直して、部長にヴァイオリンを手渡す。
「部長のヴァイオリン聴きたい」
「はぁ?ええっ、俺の?」
戸惑いながらも、やる気になったのか、ゴシゴシと勢いよくハンカチで手を拭いている。
………それで拭くのかよと文句も言いたかったけど、水を差したくないと思い、口をつぐむ。
立ち上がると、おもむろにヴァイオリンを構え、クライスラーの『愛の悲しみ』を弾き始めた。
軽やかで洗練された旋律。半音階を多用しているからか、内声が聞こえてくるような、なんともいえない物悲しさを惹き立てる曲だ。それに加え、部長の見事な技巧、溢れるほどの豊かな感受性そのものな音色―――。
こんな時は、男の俺でも惚れてしまいそうな勢いだ。
この人の、この純粋さが羨ましい。
俺は、好きな女に気持ちを打ち明けることもできない。危険が迫っているというのに、守ってやることもできない。
なんて無力なのだろう―――。
※次ページより、情熱編<R18>となります