第32章 私立リアリン学園!12時間目~アルバート~
そして―――。
一番後ろの列で神妙な顔つきで歌っている、ひときわ背の高い彼、アルバート。
見た目からして真面目一貫な風貌。黒縁のメガネの奥で、鋭く、強い輝きを放つ瞳。
生徒会の書記として、決して出しゃばることなく皆を支え、的確な意見を述べていた。ゼノ様をすごく慕っている。ゼノ様の側近だしね。
初めて逢ったのは、まだ私が『メイドカフェ☆モエ~ル』でアルバイトしていた時だった。
緊張していたのか、入口で立ち止まってしまっていて、ユーリに背中を押されていたっけ。
あの時は、あまりにもカワイイユーリにばかり気を取られていて、アルバートは『アイドル君の真面目な友達』くらいしか思っていなかった。
それから、少しした頃、もう一度会った。
ゼミでの臨時講師の仕事を終え、結衣との待ち合わせまでの時間潰しに立ち寄ったカフェでのことだった。
ゼノ様が入ってきた瞬間、空気が変わったかのような絶対的な存在感に圧倒されてしまったっけ。
その後ろに控えめに立っていたアルバート。なんか、わけのわからない呪文みたいな飲み物を注文してたよね。
注文している時に、ゼノ様がメモを落として、それを私が拾った。届けようと近づいた時、アルバートに手首を掴まれ、ねじり上げられたのだ。
あれは、すごく痛かった。