第29章 私立リアリン学園!11時間目~イケヴァン・アーサー~
3時間目の休み時間に視聴覚室の鍵を返しに職員室へ戻ると、黒崎がいなかったので、ほっとした。
それから4時間目。きっちりと時間通りに終え、少し早めに応接室へと向かう。
応接室では、案の定、セバスチャンが給仕しているので、手伝うことにする。
今日はフレンチだ。厚切りのお肉にトロリと濃厚なソースがかかっていて、美味しそう。
「シドは、先ほど出かけました。今日は、もう学園には戻りません」
セバスチャンが、料理を並べながら静かに言う。
「どこに行ったの?」
「………それは、マイン先生に関係ありますか?」
「もちろん、ないと思うけど。なんとなくどこ行ったか聞いてみようかなって流れになるじゃん?」
ナイフとフォークを束ねて持ち、お皿の横に置いていく。
「私が預かりましょうか」
このナイフとフォークを?
………って、冗談言うのは、やめとこう。
セバスチャンが眉間にシワを寄せているので。
―――もちろん、USBデバイスのことを言っているのだろう。
「ううん、私がシドに直接渡す。その方がいいんでしょ?それに、話したいこともあるし」
「話したいこと?」
セバスチャンの目つきが険しくなる。
「うん、黒崎を調べていたことを正直に話す。それで、あのお金の出どころを調べてもらおうと思って。あ、心配しないで。私はもう完全に手を引くから」
「それならいいのですが。あなたが次に何をやらかすのか心配で気が休まらないので」