第24章 私立リアリン学園!8時間目~ルイ~
「資料をお探しですか、マイン先生?」
奥からこちらへ歩み寄って来る。
なんとなくだけど、近づいてほしくないと思っている自分がいる―――。
「いえ、合唱コンクール用の楽譜を取りに来ました」
「音楽の棚はこの奥ですが、コンクール用の楽譜なら一番手前の行事用の棚にありますよ」
ニコリとして、入口の方を指差す。
………なんだ、普通に親切。
ちょっとホッとして。
「ありがとうございます、黒崎先生」
「黒崎先生、ですか………私は、今学期から主任に昇格したんですがねえ」
「あ、そうだったんですか」
「おや、ご存知ないのですか。ああ、そうそう、マイン先生は、始業式にいらっしゃらなかったようですね。寝坊と聞きましたが、最近の若い方は気楽でよろしいですな」
「………」
―――なんだろう。
片方の口角だけ上げた、薄い笑みを浮かべているのを見ていると、違和感を覚える。
多分、絶対、この人と話すのは、これが初めてだと思うんだけど。
なんだって、こんなに突っかかり口調なわけ?
私、何かした?
あ………これが、いわゆる『新人いびり』ってこと?
「聞けば、フーゾクで働いていたそうですね?メイド風のイメクラだそうで?」
黒崎が、ニヤリとイヤらしい笑みを浮かべて、近づいてくる―――。
「違います。そんなのただの噂です」
私は、強い口調で否定する。
………この人、何が言いたいんだろう?