第4章 ピアノレッスン~シド~
『いつか、この曲を、君がパートナーと演奏するのを聴きたい』
そう言って、この二重奏曲をプレゼントしてくれた。
『ウィルツの音楽祭に招待するから』
ウィルツの音楽祭。
国際的にも有名なその名を聞いて、驚く。
『そ、それは、無理!でも、たくさん練習して、誰に聴かせても恥ずかしくない演奏ができるように頑張るから。それに、早くモー君にも聴いてもらいたいし』
そして、ふと思った。
パートナー。
この曲は二重奏。
プリモとセコンドで構成されているのだから、勿論、1人では成り立たない。
城でピアノ、と言えば………。
ルイとノアの顔が思い浮かぶ。
けれど、この曲のイメージにはどうもしっくりいかない気がする。
どちらかというと、2人ともプリモのパートを弾くのに相応しいかも、と思って………。
『ロイド』
モー君が、静かに呟いた。
『え』
『これは、彼自身だから』
そう言うと、モー君は立ち上がり、部屋のドアに手をかける。
『え、待って………ロイドって、シドの事、だよね?シドを知ってるの?』
『マインの演奏、楽しみにしてる』
私の問いには答えず、それだけ言うと、モー君は部屋を後にしたのだった―――。
モー君の言葉を何度も繰り返していた。
『ロイド』
『これは、彼自身だから』
あの口調から察するに、多分2人は知り合い、なんだろうな。
それなら、どういう関係なのだろう………。