第13章 私立リアリン学園!3時間目~クロード~
「ずいぶんと熱心だな」
突然、頭上から声がして、慌てて顔を上げる。
夢中で式を書き連ねていて、人の気配にまったく気づかなかった。
すぐ目の前に立っている長身のその人は、切れ長のパープルの瞳で妖しく微笑む。
確か、主任の先生、だったような………。
名前が出てこないっ。
「宿題忘れて慌ててやってる、とか?」
「あの………一応、先生なんですけど」
「ん?ああ、そうだったな、マイン先生」
私、もしかして、からかわれてる?
「ちゃんと話すのは、初めてだよな?俺は、クロード=ブラック」
「虹野マインです。これからよろしくお願いします。クロード主任」
私は、立ち上がって頭を下げる。
「おいおい、主任なんて名ばかりの肩書きだ。クロードって呼んでくれ。同僚なんだし」
「でも、先輩ですから」
「ジルに言われなかったか?敬語は不要って」
あー、そういえば、そんなことを言われた気がする。
「了解?」
「あ、はい、じゃなくて………うん。わかった、クロード」
「それでいい。で?さっきから何やってるんだ?………微分積分?」
片手で、私の見ている微分積分の教科書をパラリとめくる。
「次の授業の準備をしてるとこ。あ、これ、どうしたらいいと思う?この公式への導き方がうまく説明できなくて」
私は、クロードがめくったページをまためくり直して、先ほど悩んでいた箇所を指差す。
「俺に数学を聞くなよ。俺は被服が専門。それ以外は教えてない」
「え、だって、全教科担当式、だよね?」
私は、驚いて声を上げる。
「俺は、特別待遇だからな」
特別待遇、か。