第5章 私立リアリン学園!序章
「イイ女が一人で酒なんて飲んでると男が放っておかないからな。気をつけろよ」
ハットを脱ぎながら、彼が笑う。
「え、いや、イイ女では、全然………」
私は、彼がお世辞でそう言ってくれているであろうと思いながらも、そう否定する。
「それは、同意ですね。私でも貴女に声をかけようと思ってしまいましたから」
と、声の方を向くと、いつのまにか私の反対側に立っている男の人が、妖艶な笑みを見せる。
なんだか妙に色気のある人………。
「おまえは、入ってくるなよ。悪者からお姫様を助け出したのは、この俺だ。なあ、お姫様?」
ハットの彼が、苦笑する。
私は、二人を交互に見て。
この人達、知り合いなんだ………。
「では、改めましてプリンセス。よろしければ、ご一緒しませんか?」
「おい、それじゃ、さっきのナンパ男と変わらないだろうよ」
「私を、あのような輩と一緒にしないでいただけますか」
嫌そうに顔をしかめる妖艶な彼と、それを面白そうに見ているハットの彼との、そんなやり取りに、思わず笑ってしまう。
そんな時、急に二人が一斉に、入口の方を向いたので。
私も、そちらに目を向ける。
お店の入口のドアが開き、入ってきたのは、落ち着いた雰囲気の少し年上の男の人で。
誰かを探しているかのように辺りを見回している。
そんな彼に―――。
「こっちだ」
ハットの彼が、手招きをする。
それに気づいて、ゆっくりこちらに向かって歩いてくると。
「ああ、遅れてごめん」
ハットの彼と妖艶な彼に、穏やかな笑顔を向けている。
タイプの違うこの三人が、飲み友達ってのが意外に思えるけど………。
「………あれ、この方は?」
少し驚いたように、私に視線を向ける穏やかな彼。
………私のこと、だよね。
「このお姫様はな………おっと、名前は、なんて言うんだ?」
ハットの彼が、紹介してくれようとするので。
「あ、私は………」
つい、名前を言おうとして、思い留まる。
そもそも、自己紹介するほどの仲ではないような………。
私が黙りこくったことで、妙な間が生まれ―――。