第25章 猫とカラ松
<カラ松side>
……こんな場所に入るんじゃなかった。
シャワーからでると、俺には愛しくて堪らない女性がベッドで幸せそうに寝ている。
たくさん歩いたし疲れたのだろう……
それでもこんなところに俺と入っても平然としてるヒナが俺の心を掻き乱す。
俺は心臓は今にも破裂しそうだというのに、ヒナは何も思わないのだろうか?
俺の視線は彼女の顔から首筋、胸元、脚へ釘付けになる。
触れたら壊れてしまいそうだ。
それでも触れたいと思ってしまう。
俺のことをどう思っている?
こんなに好きなのに……ヒナは俺をどうしたいんだろう……
目を覚ましたヒナに俺は我慢ができずに口づけをしながら想いをぶつける。
「んん……っ、カラ松っ」
息も切れ切れに俺の名前を呼ぶヒナ。
呼ばれただけで嬉しくなって俺はまた口づけを繰り返す。
今ならまだ許してもらえる。
わかっているのに止まらない。
「好きだ……っ、今だけは俺から離れるな」
「わ、私……ぁ……っ」
首筋を吸うと小さく可愛い声で鳴いた。
潤んだ瞳も真っ赤になった耳元もすべてが愛しくて、俺は何度も口づけをした。
そして、唇を胸元へ下ろしたとき……ヒナの身体が小さくなった。
雨音がやけに大きく感じる。
ニャーと小さく鳴くヒナ。
ごめんね、と言っているようだった。
「……すまなかった、レディ。全部、俺が悪い」
あんなことをしたのにヒナは俺から離れない。
俺が怖くないのか?
どうか嫌わないで……
「薬は飲まなくていい。このまま少し寝よう
もう……何もしないから……」
猫のヒナにキスをして、壊れないように抱きしめる。
俺は冷めない熱を自分の中へ閉じこめた。