第23章 猫と一松
<ヒナside>
元に戻らなくなって、私は松野家から外に出なくなった。
外に出たら、もうここに帰ってこれない気がして、出られなくなった。
ただ一松のそばにいる。
あのときのことで嫌われてないかと不安になる。
猫のままなら、そばにいてもいいかな……?
エスパーにゃんこが遊びに来た。
なんでそう呼ばれてるかはよく知らない。
猫のときは何となくだけど猫が思っていることはわかる。
お前は僕とは違うよ。
そう、にゃんこに言われた気がした。
何が違うの?
わからない……
猫のままなら、一松を傷つけなくて済むのに……
ご飯もあまり食べられなくなってしまった。
松代お母さんに申し訳ない。
ピンクのクッションの上で私はただ眠り続けた。
足音が聞こえる。
ドタドタと歩くのは十四松だ。
一松を連れて部屋に入ってきた。
「なんだよ、十四松」
「一松兄さん、ヒナ全然ご飯食べてない!」
「……」
「死んじゃうよ?」
「……俺にどうしろって言うんだよっ!
元に戻す方法なんてわからないし!」
「違うよ!
一緒にいたって二人の気持ちがどっかにいっちゃってたら何にも通じないんだよ?
大切なら……逃げちゃダメだ」
十四松はそう言って、一松を置いて部屋を出た。
「……」
置いていかれた一松はしばらく迷いながらも、私を優しく抱き上げた。
「……ごめん。
俺……元に戻らなくて、ほっとしてた。
猫のままなら、なんであんなことしたかとか言わなくて済むし。
……お前にどんな顔したらいいかとかわかんないし。
でも……」
一言、一言と言葉を並べるように一松が答える。
「お前のことが……好きだ……
だから……元に戻って」