第23章 猫と一松
<ヒナside>
……一松はいじわるだ。
私が怖がってるのをきっと笑ってると思った。
突然、温かい感触が頬に触れる。
何かと思ったら、今度は口を塞がれた。
「ん……っ」
恐怖と突然の出来事に、私は相手の唇を噛んでしまう。
二人の口の中に血の味が広がった。
「血の味……いいね」
一松の声……
そう思った時、また私の口は塞がれる。
だんだんと食らいつくように激しくなっていく口づけに翻弄され、私は恐怖とは違う感情が沸き上がった。
こんな感情知らない。
心臓が爆発しそうだ。
「っ……や……だっ!」
私は一松を突き飛ばした。
途端に私の身体が小さくなった。
猫になったことと色々な自分の感情に流され震えていると、一松に抱き抱えられる。
「……ごめん」
猫の私にも聞こえないくらい小さな声で一松は言った。