第20章 猫と十四松
<ヒナside>
「十四松?お弁当……
全部、無理に食べなくてもいいんだよ?」
一松が来られなかったから、お弁当は量が多い。
昨日もすごいご飯食べてたし、お腹大丈夫かな?
「全然へーき!うんますぎー!」
結局、ペロリと食べてしまった。
少なく作ったつもりもないんだけどな……
「じゃあ、ちょっとご飯休憩しよ」
「うん!」
「あ、右向きで横になるといいんだよ!消化にいいんだって」
十四松は私の膝に頭をおいて横になった。
「ヒナ、お母さんみたいだ」
クスクスと袖を口に持っていきながら笑う十四松。
お母さん……かぁ……
十四松には、どうしても世話を焼きたくなってしまう。
私は十四松の髪をそっと撫でた。
十四松は気持ちよさそうに目を瞑った。
「……そろそろ帰ろうか?」
「えっ?でも全部見てないよ?」
「でも、一松兄さんのこと心配でしょ?」
膝から十四松はじっと私を見つめた。
「そうだね……動物園はまた来れるもんね!」
「うん!」
家に帰ると一松は居間で寝間着のままゴロゴロしてた。
「ただいまー!あ、寝てないし!」
「……寝るの、もう飽きた」
「もーっ、熱さがったかな?」
おでこを触ると一松はちょっとめんどくさそうにため息をついた。
あ、いつもどーりだね。
「……どうだった?動物園」
「楽しかったよー!はいっ!」
私は一松にライオンのぬいぐるみを渡した。
「いい大人が、お土産にぬいぐるみ」
「えー?いいでしょ?十四松と一緒に選んだんだよ!」
「十四松……?」
十四松は居間の入口に立ったまま動かなかった。
目からは涙が零れていた。