第19章 猫とチョロ松
<チョロ松side>
僕はヒナちゃんを避けていた。
猫のときも人間のときも……
だって、わからないんだ。
もう猫じゃない彼女を知っているから、猫としてなんて扱えない。
なんで、みんな平気なんだ?
女の子が僕らの家にいるんだよ?
好きになっちゃったら、どう会話したらいいんだよっ!
「チョロ松、レディがお前に嫌われてると言っていたぞ」
カラ松兄さんがわざわざ僕を呼びだして話を切り出してきた。
「そう……」
「レディに家にいてほしくないのか?」
「違うよ!そうじゃなくて……」
「違うなら態度を治せ。
レディが出てったら、お前のせいだぞ」
「わかってるよ!」
わかってるさ……
みんな猫のときだってずっと可愛がってた。
みんなヒナちゃんが大好きだ。
僕だってそうだ。
人間の姿に変わったって可愛いことには変わりない。
いや、むしろ可愛すぎる。
可愛いすぎるんだよ……
僕はにゃーちゃんのイベントにきていた。
いつもどおりに全身全霊で応援した。
「にゃーちゃん超絶可愛いよ!にゃーちゃーんっ!」
いつもどおりなのに、何かが違う。
心の奥で何かが引っかかる。
この苦しみはどうしたら取れるんだ?
会場から出るとヒナちゃんが出口に立っていた。
いつもと違って帽子を深くかぶり、腰にカーディガンを巻いていた。
「あ、チョロ松くん!」
嬉しそうに僕に手を振るヒナちゃん。
「……どうかしたの?」
「うん。チョロ松くんに見せたいものがあって……」
「でも僕これから彼らとイベントの反省会するから……」
これは嘘じゃない。
でも、ヒナちゃんが困った顔をすると、結局、僕の胸は苦しくなる。
「あのね……どーしてもお願いっ!
ちょっとだけでいいから!」
ヒナちゃんは仲間達に謝りながら、僕の手を引いて走った。