第15章 苦労の三男
……あのあと……
結局、誰が家まで送るかで喧嘩が始まってしまい、いつまでも終わらないので、チビ太がチョロ松に送るように言った。
「……す、すすすみません!
会ったばかりなのに、僕が送ることになっちゃって」
「ううん、何かごめんね?
チョロ松くん食事にきたのにあまり食べれてなかったよね」
「い、いやいやいやっ、そんなこと気にしないで!
喧嘩始める兄弟が悪いんだから」
二人で妙にかしこまってしまう。
初対面のフリってどんなんだろ?
二人でゆっくり歩きながら静かな時間が流れ、空を見上げる。
「あ……」
「え?」
「月……真ん丸だね」
「そっ、そうですね!」
「あ、敬語になってるよ、チョロ松くん」
「ご、ごめん……」
「また謝ってるし」
ふふっと私が笑うと、チョロ松はしょんぼりしながら言った。
「僕、あんまり女の子と二人で話すとか何、話していいかわかんないし、緊張しちゃうし、いや、しゃべりたくないわけじゃないんだけど、どうしたらいいかわかんなくなっちゃって……」
「うん」
「それにヒナちゃんみたいな……
か、可愛い子と一緒に歩くとか……
あ!ヒナちゃんとか名前勝手に呼んだりして、ご、ごめんね?
みんなが呼んでたからなんか真似しちゃったって言うか、いいなって思って」
話しているうちにだんだんと早口になるチョロ松。
「ふっ……ふふっ、あははっ」
「えっ?!
僕なんか変なこと言ったかな?
やっぱり名前で呼ばれるの嫌だった?」
「ううん、チョロ松くん。
めっちゃ早口で喋るんだもん。面白くて」
「お、面白いんだ?」
「うん。あ、名前は呼び捨てでもいいよ」
いつもみたいに。
「よ、呼び捨てはハードル高すぎだよ……」
そんなこと……ないよ。