第14章 長男の本気
<ヒナside>
松野家からでて少し歩くと、後ろから声をかけられる。
「待って待って!送ってくよ」
そう言ってニカッと笑顔を見せるおそ松。
「でも、まだ明るいし、大丈夫だよ?」
「んー、そうじゃなくて。
俺もヒナちゃんのこともっと知りたいしさ、ダメ?」
「ふふっ、ありがとう。じゃあお願いします」
二人で並んで歩く。
「一松とも仲良くて驚いたよ。
あいつ、あんましゃべんないだろ?」
「んーそんなことないよ?」
「あんな性格だから、友達も猫ばっかだし」
猫……そうだね。
私は一松にとって猫と同じだもんね。
そう考えると胸がチクッと痛んだ。
「んー?どっした?」
「え?うーん……
私、自分が思ってるより一松くんと仲良くないのかなって」
「そりゃないよ。あいつ、兄弟以外と二人きりで話すとこなんて見たことねーし。
ほんと、ヒナちゃんが友達とか奇跡なんじゃねーの?」
「話すとき隅っこ行っちゃうけどね」
「ハハッマジで?あいつらしいよ!」
おそ松は並んで歩くと、さりげなく車から離されたり、気を使われていることに気づく。
結構、女の子の扱いに慣れている?
チラッと私が顔を覗くとすぐに気づく。
「……なーんかさ。
俺達、今日初めて会ったよね?」
「う、うん」
「それが不思議でさー。
ぜんっぜん、そんな気がしないんだよなー?」
おそ松は妙に勘がいい。
私はじっと見つめられ、思わず目をそらしてしまう。
「ま、いっか!
もしかしたら前世で会ったのかも?」
そう冗談ぽく言いながら、鼻を擦りながら笑うおそ松。
「前世?ふふっ、そうかも。
あ、ここでいいよ。
ありがとう、送ってくれて」
「へー家ここらへんなの?結構近いんだな」
さすがにアパートまでは行けなかった。
何もない部屋を見られては困る。
「じゃあ……」
「あっあのさ、明日空いてる?」
「え?う、うん」
「じゃあ俺とデートして!
明日10時にここくるから!じゃ、ねーん♪」
おそ松は私の返事も聞かずに走り去っていった。
長男様はゴーイングマイウエイだ……