第13章 優しさの奥に見えるもの
<ヒナside>
最近、カラ松が元気がない。
私を撫でる時もどこか違うところを見ている気がする。
……何か悩んでいるのだろうか?
「次からは約束しよう」
カラ松はそう私に言ったのに、私は約束もしないで、そのまま走り去ってしまった。
約束、ちゃんとすればよかったな……
私はそのときの後悔を胸の中にずっと引っかけたままだった。
ある夜、六つ子達の布団からカラ松が出ていく。どうやらベランダに出たようだ。
待ってみたけれど、カラ松はなかなか戻ってこなかった。
私はベランダに上がり、屋根へ様子を見に行った。
カラ松は静かにじっと夜空を見つめていた。
やはり、何か悩み事があるのかな……
「ヒナ……」
カラ松が夜空を見たまま私を呼んだ。
とても優しい声だった。
後ろにいたのに気づかれた?
カラ松は振り返らず、夜空を見つめたまま動かなかった。
私に気づいたのではないのだろうか?
私は1歩前に動いた。
………カタッ………
瓦の音がなってしまった。
カラ松が振り返る。
私はなぜか元の人間の姿に戻っていた。