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【松】猫と六つ子

第11章 ヒマワリの向くところ



後ろを振り返るとすでに目の前に十四松が立っていた。

「あっ、うん……大丈夫……です」

「足、血が出てるよー?」

自分の足を見てみるとぶつかったときに擦り剥いたようで血が滲んでいた。

「近くに公園あるから、こっち」

「え?わわっ!」

十四松は当たり前のようにヒョイッと私を抱き上げ、ぶつかった人に会釈をして走った。
一松といい、十四松といい、人間の女を簡単に抱き上げる……だ、誰にでもするのかな?



抱き上げられたまま公園に着き、水飲み場で降ろしてもらったので、私は足を洗った。
どう接したらいいのかわからず、無言でいると……

「また一松兄さんに怒られちゃうね?ヒナ」

「えっ?!」

ニコッと笑顔を向ける十四松はいつもと変わらない十四松だ。
猫のときと向ける視線が同じ。
十四松は私をヒナだとわかっている。

「僕も汗かいたから、ついでに頭冷やそっとぉ!」

そのまま野球帽を脱ぎ、十四松は水道に頭を突っ込んだ。



「……十四松?なんで私のことわかったの?」

「えー?わかるよー?……あー気持ちよかった!」

ぶんぶんと頭を振り回すので、慌てて銭湯で使おうと思っていたバスタオルを渡した。

「だって人間なのに……」

「見た目は関係ないよ!だって、ヒナはヒナの匂いしかしないよ?」

「ええっ?!私、匂うの?!」

「そうじゃなくて……
あっ!あっちのベンチで乾かそう!」

首に渡したバスタオルを巻くと、再び私を抱き上げ、十四松はベンチに向かった。
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