第11章 ヒマワリの向くところ
<ヒナside>
一松に正体がバレてから私は一日に一度、元に戻って銭湯に行くようになった。
さすがに今となってはお風呂に入れてもらうとか恥ずかしくてできない。
というか、試そうとして一松が鼻血を出して倒れた。
「俺はどうせ燃えないゴミ……
ああ、元々クズでゴミでしたスミマセンね」
そ、そこまで言わなくても……
そう言って一松は部屋の隅っこから、しばらく動かなくなってしまった。
住んでいたところが燃えてしまって、服もほとんど残ってなく、ただ寝るだけのために借りたボロアパートに私は着替えなどを取りに戻った。
松野家に住み始めてから、まったく戻ることのなかった部屋。
家具もなく、ガランとした部屋を見ると胃がギュッと痛くなる。
私は急に寂しくなり、着替えを持って逃げるように部屋を出た。
銭湯に向かっている途中、河原の近くを通った。
……今日も十四松はいるよね?
私はさっきの寂しい気持ちに無性に我慢できなくなり、十四松のいるいつもの場所へ向かった。
「4958!4959!4960!」
毎日続く、この明るくて元気な声を聞き、私はほっと息をついた。
十四松に見つからないように少し離れたまま、私はしばらくかけ声を聞いていた。
……これじゃあ、ちょっとおかしな人だ。
さっさとお風呂行っちゃおう。
そう思いながら銭湯へ向かおうとし、私は後ろを通っていた散歩の人に気づかず、ぶつかって転んでしまった。
「ご、ごめんなさい」
ぶつかった人に謝って、慌てて私はその場を去ろうとした。
「大丈夫?」
「え……っ?!」