第54章 ちっちゃな君と僕 逆ハー
白い白い部屋。
どこを向いても白い。
そんな部屋の真ん中でポツンと一人チョロ松は座っている。
「……………………………………」
「君達の世界もめちゃくちゃザンスね。
面白くも何もない。神にどうにかしてもらおうなんて調子が良すぎるザンス」
目の前に現れたイヤミのような姿をした人?いつか夢に出てきたこの人物はチョロ松の前に突然現れた。
「ごっごめんなさいっ!すみませんっお願いですっ!僕が全部悪かったんです!どうか、どうかっヒナちゃんを元に戻してくださいっ!!!」
この期を逃してなるものかとチョロ松はイヤミ?にしがみついた。
「ミーは人助けする趣味はないザンス。もちろん……君の為でもないザンス」
チラリとしがみついたチョロ松の反対側を見たイヤミ?。
その先にはいなかったはずのヒナがコロンと転がりながら現れた。
元の姿のサイズだ。
「……お願いします。どうか、許してください」
イヤミ?に向かってヒナは土下座をする。
ヒナはチョロ松とは違う夢にいたが、そこでもイヤミ?に向かって頼み続けていた。
「……しつこいなぁっ!本当にっ!
もーめんどくさいから、これをあげるよ」
イヤミ?は一本のナイフを取り出す。
「どちらかが死ねば元に戻るよ。
どちらかが生きていれば夢は醒めるよ」
「そっ、そんなっ!?」
慌ててチョロ松がイヤミ?の顔見上げたときには彼はもう目の前から消えていた。
チョロ松とヒナの目の前にはナイフが一本残されていただけだった。
白い部屋にはチョロ松とヒナとナイフが一本。
ヒナはすぐにそのナイフを拾った。
「死ぬなんて、そんな……」
「チョロくん。私ね、あの人に沢山の夢を見させられたの。何度も何度も死にそうになったの。
でもね、そんなことよりも何よりも私の為にみんなが……死ぬのが何よりも怖かった。
だから、ごめんなさい……目を瞑ってて」
チョロ松の目を手で押さえると、ヒナはナイフを自分の胸に突き立てた。
「うそだ…嫌だ…ヒナちゃん。お願いやめて……っ、僕がっ!」
近くで起こった音やヌルリとした血の感触がまるで現実のように感じ、チョロ松は目を塞がれたまま叫んだ。