第54章 ちっちゃな君と僕 逆ハー
<チョロ松side>
ヒナちゃんが小さくなって5日目……
あれから、僕は毎日夢を見る。
真っ白い何もない部屋にただ一人。
ポツンと座り込んでいるだけ。
誰もこない。
僕も動かない。
兄弟もいない。
ヒナちゃんもいない。
普段、家に帰って一人だったらラッキーだって僕は思う。
それくらい家は毎日うるさい。
だから………この静かな空間が僕は死ぬほど怖い。
動けない…誰か……助けて。
「……くん……、チョロくん……っ!」
ハッと目を開けると目の前には小さなお人形の君がいた。
「大丈夫?チョロくん?すごくうなされてたよ?」
心配そうに小さな手で僕の頬を撫でる。
僕は夢の中の気持ち悪さから布団に横になったまま自分の額に手を触れた。じっとり冷や汗をかいていたようだ。
「……ん、大丈夫。変な夢見てただけだから」
「……そう……?無理しないでね?」
「うん……あ、ちょっとだけ……抱きしめてもいい?絶対つぶしたりしないから」
「ふふっ、そんな心配してないよ」
コテンと手の中に転がるヒナちゃんを両手で包み、布団で隠れないようにしながら胸元で抱きしめた。
「……大好きだよ、ヒナちゃん」
「うん、私も……チョロくんの心臓の音が聞こえる。
眠くなりそ……」
きゅっと僕のパジャマを掴む。
たったそれだけなのに僕は目から涙が溢れそうになった。
「このままもう少し寝たいかも……」
「チョロくんが怖い夢みませんように……」
僕の手の中で何度もヒナちゃんは唱えた。
それを聞きながら涙を枕で拭いて、僕はもう少し寝ることにした。