第54章 ちっちゃな君と僕 逆ハー
<ヒナside>
唾液を取ったあと、デカパン博士にはまた2週間後来るようにダスと言われ、私はトド松のパーカーに入って家路についた。
2週間?
簡単に2週間って……結構ヤバくない?
猫の姿では簡単に元に戻れるようになった今、こんな不便に思うことはなくなった。
ペットではなく家族として少しでも役にたてるようになったから……
では、猫のままずっと松野家に住んでいたらどうだったのだろう?
猫になりきれたのだろうか?
今ではそれがわからない。
「……」
「これがパン屋さん用!
これがお医者さん用!
これが舞踏会用!」
お母さんがランランとした顔で私を見つめる。
コック……ナース……びらびらドレス……
選択肢ぃぃいっ!
「母さん、ヒナちゃんは着せ替え人形じゃないんだから普段着を先に用意してくれないと……」
「ヒナちゅあああんっ!
ほーら、ドールハウス買ってきたぞぉおおっ!」
玄関から息を切らせながら入ってきた松造の手には自分と同じくらいのサイズのおもちゃの紙袋。
「いやいやでかすぎ、何人部屋だよ……」
「三階建てだぞ!うちより広いぞぉ~♪お風呂もキッチンもトイレもあるぞぉ~」
松野家のおままごと会が始まった。
とりあえず私はコックにしといた。