第53章 猫とイヤミ
……暖かい……ザンス
目を開けるとそこは道端ではなく、狭く古びた部屋。
ただ、置いてあるものはきちんと並べられ、綺麗に片付けられている。
ミーは毛布に包まっていた。
「あ……っ、目、覚めました?」
ひょっこり顔を出したのは、どこかで見たことのある顔。
考えるよりも先にお腹を刺激する匂いと共に部屋に入ってくる。
「……シェッ!?」
差し出されたおにぎりと温かい野菜の入ったスープを勢いよく口に頬張った。
「あっ、慌てると熱いですよ?!}
「っ……お、美味しいザンスーッ!!!」
一頻りお腹を満たされたあと、向かいに座っている小娘を見る。
視線に気づき、不思議そうに笑顔で見つめ返してくるこの小娘……思い出したザンス。
六つ子の飼い猫。
実際はあんまり近くでは見たことはないザンス。
なぜかと言ったら、常時あのクソな六つ子達の誰かしらに囲まれている。
澄んだ瞳に透き通る白い肌、触れたくなるようなサラサラのセミロングストレートヘア。弱井トト子のような美少女ではないが、ふとした笑顔にあの童貞クソニートの六つ子共が夢中になるのも無理はないザンスね。