第51章 夢に囚われて ~トド松王子~
月明かりだけが照らされた部屋に入る。
「おお、ヒナ……
薬を持ってきてくれたのザンス?」
「ええ、お婆様。薬はこちらに……」
「……もっと近くへ来ておくれザンス」
「お婆様、なんだか耳が大きいわ。病気のせい?」
「そうね、チミの言うことがよく聞こえるようにザンス」
「お婆様、なんだか手も大きいわ」
「そうね、大きくなけりゃ、チミのことを抱いてあげることが出来ないザンス」
「それに、お婆様のお口とっても大きいのね」
「そうね、大きくなけりゃ……
チミのことを……食べられないザンスからっ!」
ガバッと起き上がったイヤミへ銃口を口の中に突きつけた。
*「助かったよ……お婆様がイヤミでさ?
遠慮なくたっぷり打ち込める♪」
バンバンッと静かな森に銃声が鳴り響いた。
至近距離で撃たれた狼はあっけなく倒れ、魔法のように消えた。
消えた場所にはイヤミが倒れている。
あー……よかった、お腹裂くとかキモくて無理だし。
「お婆様!」
隠れて見ていたヒナちゃんがイヤミに駆け寄った。
イヤミはグースカ寝息をたてていた。
「……息してるし、大丈夫じゃない?」
「そうですね。
トッティ、本当にありがとう……
まさか狼がお婆様に成り変わっているなんて……」
「うん、嫌な予感が的中して良かったよ♪」
まぁ赤ずきんちゃん定番だしね。
夢魔の言葉を思い出す。
忠告されたわりには思ったよりあっさり終わったな。
でも、まぁ頑張ったほうじゃないのかな?僕♪
「もし、良かったら……私とお友達に……」
「友達?んー友達?
違うんだ……ヒナちゃん。
僕は友達なんかになれない。だって僕は……君の……」
ふと、僕の手元にカサッと感触が現れた。
……ふーん……