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【松】猫と六つ子

第51章 夢に囚われて ~トド松王子~



「あの、助けて頂いてありがとうございました」

「う、うん……怪我なかった?」

「はい……!
あっ、貴女の頬が……っ!」

「え……っ?」

どうやら狼が襲ってきたときに擦ったみたいで、頬から少し血が出ていた。

「夢中で気づかなかった……」

「お顔に傷が残っては大変ですっ!
すぐ手当てを……」

僕はヒナちゃんに連れられ、月明かりが照らされた木陰に隠れるように座りこんだ。
狼がまた来るかもしれない……そんな恐怖もヒナちゃんを見ていると忘れてしまいそうになる。僕は消毒され、手当てをしてもらった。



「こんな綺麗な肌に傷が残らないと良いのですが……」

心配そうに僕の顔を見つめる。
いつもと何にも変わりのない曇らない瞳で見られるとすぐにでも抱き締めたくなった。

で、でもなんか、ち、近い……
ヒナちゃんのふんわり甘くて誘惑する香りが僕の鼻をくすぐる。そんな寄り添われたら色々もう我慢出来なくなりそうなんだけど……

「あ、あの……ちょっと近くない?」

「えっ!?あ……ご、ごめんなさいっ!
同じくらいの歳のお友達がいないので……
嬉しくなってしまって……」

恥ずかしそうに頬を染める。
うぅっ……やっぱりいつも以上に可愛い……

「こんな森の中で、そんな可愛い格好してたら、襲ってくださいって言ってるもんだよ?」

僕だからまだしも……
クソ長男兄さんとか、痛兄さんとか、オタシコスキー兄さんとか、闇松兄さんとか、野球馬鹿兄さんに……何されてもおかしくないよ?

「ふふっ、でも貴女もとても可愛らしい格好ですよ?」

「えっ?あ……っ!」

*うっ……そうだ……
ヒナちゃんに夢中になってて、また忘れてたけど……
僕、今女装中だったよ……
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