第9章 喧嘩して仲直り
あれから数日……
私は一松を避けていた。
あの一言を思い出すとゾクゾクと悪寒のようなものが走った。
みんなといるときは普段どおりなのに、たまに刺さるような一松の視線。
私はそれを感じるとなんともいえない気持ちになって逃げてしまっていた。
昼下がり、みんなが出かけたのを確認して、私は松野家のベランダで昼寝をしていた。
すると突然抱き上げられ、ギョッと見上げると一松だった。
一松は何も言わずにベランダから私を部屋に入れると窓をピシャリッと閉めた。
「……」
き、気まずい……
二人きりの空間で、じっと見つめる一松にいたたまれなくなった私はそろりそろりと下の居間へ降りようとした。
「逃げるな」
ピシャッと襖を目の前で閉められ、再び一松に抱き上げられ、そのまま私は部屋のソファーに降ろされた。
「……俺のこと、怖いの?」
ため息をつきながら一松が言った。
違う、怖くない。
私はとまどいながらも一松を見つめた。
「……なぁ?
お前、俺に貸しばっかだよなぁ?
助けてもらって、世話してもらって、この間だって……困った顔してるから助けてやったのに、何その態度?」
一松が怒ってる。
私に怒りを向けたのは、松野家にきてから初めてだ。
たった数分の無言がとても長く感じられ、部屋の空気がどんどん重くなってくる。
「……もうケガ治ったんだし、出てけば?」
もう一度大きくため息をついた一松が私から目をそらして冷たく言い放った。
その言葉を聞き、慌てた私は胸のチャームを引っ掛け薬を出し、急いで飲み込んだ。