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【松】猫と六つ子

第37章 ずっと一緒に 前編


<一松side>

手紙を読んだあとの家は地獄絵図のようだった。
十四松は泣きすぎて、ひきつけ起こすし、
トド松はずっとヒステリックに叫んでるし、
おそ松兄さんとカラ松兄さんは態度がどうとか因縁つけて殴りあいを始めた。
それを必死に止めたり、走り回っていたのはチョロ松兄さんだ。



俺は……ただ隅で座ってた。
頭が回らず、夜中になってもそこから動かなかった。



あいつを拾う前の俺ってどんなだっけ……?
ヒナがいないのに俺、なんで息してんの?
なんで生きてんの?

こんな気持ちになるなら、ずっと閉じ込めておけばよかった……
ずっと外に出さなきゃよかった。
俺のそばに……



俺は気がつくとヒナのアパートに来ていた。
昨日、馬鹿みたいに必死に走って見に来たアパート。
同じように何にもない空っぽの部屋。

一度だけ……二人で来たことがある。

ヒナは、ずっと何もなかった部屋が俺たちといるとここにも荷物が増えてくるんだよ、と嬉しそうに笑ってた。
そんときはただ、ふーんと言った俺。

何もない空っぽの部屋を見ていると、そんとき笑ったヒナの顔が頭から離れない。



「クソ……なんだよ……っは……」

頬に温かいものが当たった……
自分の涙だと俺は手で触るまで気がつかなかった。

俺は自分が怖くなって部屋の扉を閉めた。
涙を袖で拭いて、落ち着かせようと大きく息をはいた。
ふと、ポストの下に一枚隠れるように落ちている紙を見つけた。
……写真だ。



「……は?なんだこれ……」
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