第35章 紙一重の二人 逆ハー
<十四松side>
全球かっとばして、僕はヒナに褒めてもらおうとフェンス越しに二人を見た。
……え?
カラ松兄さんとヒナがキスをしてた。
最初にズルいって思った。
そのあと羨ましくなって、あとはカラ松兄さんを蹴り飛ばそうかと思ったけど……
ヒナの顔を見たら、できなくなった。
僕が扉を開けると二人は慌てて離れた。
「よ、よし!俺の番だな!」
「が、頑張れ!カラ松!」
……あれ?なんで?
なんで何もなかったことにしてんのかな……
ヒナは耳まで真っ赤だ。
「ヒナ……」
「ん?」
「カラ松兄さんのこと、好きなの?」
「えっ?……えと……」
「好きなんだね……じゃあ、僕は?
僕のことは?」
「十四松……」
僕はカラ松兄さんに負けませんようにと、願いを込めてヒナに口づけをした。
好きだよ、大好き……
僕の気持ち、これでわかってくれるかな?
「レディ、見ててくれ!
この俺のパーフェクトスイング……って、おいぃっ!」
フェンス越しにカラ松兄さんが叫んだ。
そう、僕もさっきそれしようと思ったんだ。
「……何?カラ松兄さん」
「何じゃなぁーいっ!……グァッ!」
「カラ松!?」
豪速球マシンの球がまだ残っているのに慌てて出てこようとしたカラ松兄さんの背中に球が直撃した。
ヒナは僕から離れて、カラ松兄さんに駆け寄った。
僕の想い届かなかったのかな……?
僕は苦しくなって、その場から走って逃げた。