第32章 兄二人 逆ハー
<ヒナside>
バッシャーン!!!
見事に池に落っこちた二人。
ボートには私一人。
ただでさえ、ボートに三人で乗ってた上に抱きしめあったりしてたので、他のボートの人達からチラチラ見られてたと言うのに……
もうっ、馬鹿なんだからっ!
でも……好きなんだよね……はぁ……
池からあがって、秋の寒空の中、上着のパーカーを脱ぐ二人。
「だーかーらっ!ちょっとぐらい我慢しろよ!
何が誰にもやらんっだよ!ざけんなっ!
……へっくしゅっ!」
「お前こそ我慢しろよ!
レディとデートする予定だったのはこの俺!
……っくし!」
「もうっ喧嘩ばっかして!
早く着替えてきてっ」
子供でもないのに、出かけるのに二人の着替えを持ってきている私……
この家にいる限りはしょうがないのだ。
私は池の橋で二人が戻るのを待つ。
毎日のように何かが起こる松野家。
でも……それが楽しくてしかたない私。
ワガママで駄々っ子だけど、本当は一番頼りになるおそ松。
痛くてダサいけど、誰よりも優しいカラ松。
好きすぎて、私はきっとおかしくなったんだ……
「ねぇ、お姉さん?」
ハッと振り向くと後ろには知らない男の人達が五人。
「泣いてるのー?男にでも振られた?」
「可愛いー」
「俺達が慰めてあげよっか?」
橋の上なので逃げ道がなくなり、ワイワイと周りを囲まれてしまう。
「い、いえ、人待っているので……」
「泣いてたじゃん。
いいから俺達と遊ぼうよ」
グイグイと押され橋から連れ出される。
「あ?何、俺のもんに触ってんだ?ゴミ野郎」
「愛しきレディから離れろ、クソ共」
言うや否や男五人に殴り蹴りかかるおそ松とカラ松。
倍以上いる相手をもろともせず、息を合わせたように動く二人。
てか、この二人、無駄に喧嘩強い……