第31章 猫とハタ坊 後編
<トド松side>
ヒナちゃんはアタッシュケースも手紙も知らないようだった。
あのあと、兄さんたちも合流して、僕らはみんなで家に帰った。
その日の夜。
僕とヒナちゃんはベランダで二人で座って話をした。
「ハタ坊のお家から電話したんだけど、全然繋がらなくてね?
ハタ坊が連絡してくれるって言うからお願いしたの」
「ふーん、そっかぁ~」
そもそもかからないっておかしくない?
僕たち全員家にいたし!
あのヒナちゃんに抱きついたときのハタ坊の顔……イラッ
絶対にわざとだった!
くっそぉ……可愛さ勝負じゃちょっと負けそうだし!
「フフッ、トッティ?顔が面白いよ?」
クスクスと楽しそうに笑うヒナちゃん。
しまった……顔に出てた。
「ね、ねぇ、ハタ坊の家にはまた行くの?」
「あー、うん。帰る時また誘われたよ?」
「それっ僕も行くから!
あそこには一人で行かないでっ」
「えっ?」
「一人で行ったらダメだからね!?
迎えに行くの大変だし!絶対だよ!」
「う、うん。わかった。
じゃあ一緒に三人で遊ぼうね?」
ニコニコと笑うヒナちゃん。
ほんとにヒナちゃんの笑顔にはかなわないや……
僕があいつから守るから!
「ねぇ……?僕……
兄さんたちとはぐれて一人になっても、
ヒナちゃんに会いたくて、すっごく頑張ったんだよ?
だから……ご褒美欲しいな?」
「ご褒美?」
「うんっ♪」
そう聞いてジッと僕のことを見つめるヒナちゃん。
そんなキラキラした目で見られると心臓がドキドキしてくる。
絶対おねだりしようって決めて言ったのに……僕、緊張してきちゃったよ……
「トド松……いい子いい子♪」
ギューッと僕を抱きしめ、頭を撫でるヒナちゃん。
僕はヒナちゃんの匂いでふんわり包まれる。
……んー……嬉しいよ?
でも……ちょっと足らないかな……
……チュッ……
僕はヒナちゃんの唇にキスをした。
「えへへ♪これくらいはもらわないとねっ?」