第30章 猫とハタ坊 前編
<一松side>
元の道が塞がれてしまった以上、進むしかない。
……はぁ……嫌な予感しかしねーし。
カラ松を除く兄弟で先に進むと螺旋状の階段が現れた。
まぁ、エレベーターなんてあるわけないよな。
てっぺんまで続いてんのかな……俺達は黙々と進んだ。
グルグルグルグルと続く長い階段。
頭が痛くなりそうだ。
「あーハタ坊ん家、何階建てだっけぇ?
まじきっつ……」
「知らない」
「ねー?なんか聞こえる」
十四松がそういうので耳をすませてみるとパタンパタンッと音が聞こえる。
下からの音は近くなり、それは階段の段差が消えて倒れていく音だとわかった。
「げぇっ!やっべ、走れっ!」
俺達は必死に走った。
しかし段差がなくなるスピードも早い。
「も、もう無理っ!ア"ァーッ!」
「トッティィィー!」
トド松が段差に足が引っ掛かり、なくなった階段から滑り落ちていった。
憐れトド松……あとでクソ松とともに骨は拾ってやるから。
「こっちに道がある!」
階段から横道を見つけ、俺達は逃げ込んだ。
全員、猛ダッシュで完全に息切れだ。
横道を進むと小さな部屋に入った。
ソファーにテーブル、調度品などが置いてあり、まともな部屋だ。
侵入者用の入口から入ったのに?
「はぁー……ちょ、ちょっと休もうぜ」
「アタッシュケースが重くて手が痛いし、走りすぎて足がおかしくなりそうだよ」
「だから置いてけって言ったじゃん」
「で、でもっ返さないと!
ヒナちゃん帰って来なかったらどうするんだよ!」
……もっともだ。
しかし、俺もあの金にはちょっと誘惑された。
あいつと交換する気はないけどさ。
「……あれ?十四松?」
やけに静かだと思ったらテーブルのほうにいた十四松がいない。
気付けば俺達は三人になっていた。