第30章 猫とハタ坊 前編
<おそ松side>
俺達は急いでハタ坊タワーへ向かった。
アタッシュケースは置いて行こうと言ってみたが、チョロ松が許してくれなかった。
くそー、札束一つくらい抜いといたっていいと思わない?
入口にはハタ坊の社員達がズラリと並んでいる。
は?何……この厳戒態勢?
「すみません、ハタ坊に会いたいんですが?」
「本日は誰も通すなと指示をうけております」
「俺達はハタ坊のフレンドだ。
俺達が来たと伝えてくれ」
「松野様も通すなと指示をうけております」
「どうゆうこと?!
何で入っちゃいけないわけ?!」
「申し訳ございません。
本日はお帰りください」
「あ?入れろっつってんだろーがっ!」
一松がハタ坊社員にブチキレる。
こいつがキレるとめんどくさいんだよなぁ……
「ですから、こっちはハタ坊に用があるんですよ。
さっさとそこ開けてください」
言葉は丁寧なのに、顔は完全にキレちゃってるチョロ松。
お前がキレると他の兄弟を止めるやつがいねーだろぉ……
頼むから、その持ってるアタッシュケース投げつけないでね?
「実力行使が必要か?」
おい、カラ松……お前が暴れたら俺も止めらんないから。
「戦争?抗争?アハハ!」
十四松どっから持ってきた釘バット。
はぁー……弟達に先にキレられちゃって止めるのレジェンドのお兄ちゃんしか残ってないじゃん?
俺だってブチキレたいんだけど?
「お前ら、ちょっとこっちへこい」
俺は弟達を連れ、ハタ坊タワーの玄関から離れ、ぐるりとタワーの裏側へ回った。
タワー自体でかすぎて裏側回るだけで結構な距離がある。
「おそ松兄さん!なんで止めるの?!」
「おい!どこ行く気だ!?」
「前にここでちょっと働いたとき、警備で連れて来られたことがあるんだ」
タワー正面玄関の真裏に、隠れるようにある日が射さない真っ黒な入口。
入口には堂々と侵入者用入口と書いてある。
「俺も中には入ったことねーけど……」
さて、うちのお姫様を探しにいきますかね。