【イケメン戦国】Love is not needed.
第4章 その3
「ひでまま、とはどういう意味が込められているんですか?」
三成が瞳をキラキラとさせななしへ問う。
こんなどうでもいいことにも知りたがり精神は発揮されるようだ。
「…私の故郷では、母親のことをママって呼ぶ人達がいるんだよね。秀吉さんって母親みたいだから、ひでママ。」
「なるほど!」
「その理屈ならば、まぁ、間違ってはいないな。」
「確かに、秀吉さんの世話焼きは母親のそれですからね。」
「お前ら好き勝手言ってくれるな!」
ななしのつけたあだ名に納得している面々に噛みつく秀吉を押し退け、今度は政宗が瞳を輝かせた。
「ななし、俺のあだ名も決めろ。」
「えーと…政宗さんは……」
ななしはうぅーん…と眉間に皺を寄せ考えるが、すぐにめんどくさそうに言った。
「伊達ちん」
「これまた珍妙な…」
「伊達ちん……気に入ったぜっ。」
本当にこんな適当なあだ名が気に入ったのか?と不可解そうに政宗を見るも、本人はとても嬉しそうに「俺は独眼竜、伊達ちんだ。」と迷惑顔の家康に自慢しているので、ななしはもう放っておくことにした。
そして、次に光秀を見る。
目が合うと、彼はななしへ向けてにやりと意地悪そうに笑った。
ななしも対抗するようににっこり微笑む。
ななしの中で、光秀は変なあだ名をつけたい武将No.1だった。
いつも飄飄としていて隙がなく、大人の色気のあるイケメン。
そんな彼が、女の自分(それも素性の知れない変な女)から間抜けなあだ名で呼ばれる姿を想像すると、心底可笑しく愉快だった。
最低である。
「光秀さんは、アケチーヌで。」
「ぶはっ」
光秀のあだ名に誰よりも早く反応を示したのは秀吉で、手で口を覆いながら肩を震わせ踞っている。
ひでママ大爆笑。
「……ひでままは俺のあだ名とやらが余程お気に召したようだ。譲ってやろうか?」
「っ…いゃ…フッ…遠慮、するっ…!」
「そんなに喜んで貰えてうれしいわぁ。」
「秀吉さんが喜んでるのおかしいだろ。」
さて、ななしは残る一人に目をやる。
信長である。
「信長さんは……」
そう言いかけた途端、爆笑していた秀吉はぴたりと笑うのをやめ、素早くななしへ歩み寄った。