【イケメン戦国】Love is not needed.
第4章 その3
政宗に促され、まだ頭の中が光秀のぐちゃぐちゃ御膳でいっぱいの状態のまま家康へ視線を移す。
そして、ぐちゃぐちゃ御膳は一瞬で吹き飛んだ。
「赤っ!!!!!!」
「…うるさい…」
迷惑至極とでも言うように、家康はななしへ目も向けず眉間に皺を寄せ、唐辛子を大量に煮物に振りかけている。
「えっ…、え?…赤……かけすぎ…いや、え?!」
「日本語喋れ」
二人の行動に大混乱なななしに、秀吉と三成が状況を説明してやった。
「光秀は、いつも料理を全て一緒くたにして食事をするんだ。」
「家康様は辛いものを好まれるのですよ。いつも持参した唐辛子を振りかけて召し上がっておられます。」
一応、理解は出来た。
出来たが、納得はいかなんだ。
「光秀さんもイエティも…舌がバカになるよ…」
「…いえてぃ?」
「ごほっ…!!!」
信長が不可解そうに呟き、それと同時に真っ赤に染まった煮物を頬張っていた家康がむせる。
「っ…あんた、その呼び名本当にやめろっ…」
「家康のことなのか?その、いえてぃってのは」
「はい」
ななしを恨みがましく睨む家康を余所に、三成がパッと明るい声をあげた。
「家康様のあだ名ですね!」
「正解!」
うふふと笑い会う二人に対し、政宗が興味津々と訪ねる。
「なんだよ、そのあだ名ってのは。」
ななしと三成で、他の武将達皆にあだ名の説明をした。
「私のあだ名は“みっつん”で、家康様は“いえてぃ”のようですね。」
「勝手に決めるな。」
「中々面白い。ななし、ここにいる全員のあだ名を決めよ。」
「え?あ、はい」
どうやらあだ名という文化は信長のお気に召したようで、ななしは他の武将達のあだ名も考えなければならなくなった。
(めんどくさいことになった…)
「えぇっと…秀吉さんは…」
「………」
頼むから奇妙なあだ名は付けてくれるな。
秀吉は目でななしに語り掛ける。
彼女は秀吉の視線に込められた意味をしっかりと理解した。
そして、めちゃくちゃ変なあだ名を付けてやろうと心に誓った。
哀しいことにそういう質なのだ。
「じゃあ、“ひでママ”で。」
「どうすればそんな奇妙な呼び名が思い付くんだ!」
最悪だ!
と秀吉は突っ伏した。
一方ななしは満足気である。