【イケメン戦国】Love is not needed.
第4章 その3
「ううん、大丈夫。多分、ちょっと疲れただけ。」
「そう、ですか…」
まだ心配そうな三成に見つめられ、さてどうやって誤魔化そうかとななしが考えを巡らせていると、三成の後ろから今度は秀吉が現れた。
「なんだ、もう帰ってきたのか。」
「ただいま戻りましたー」
「随分早かったな。」
これ幸いと秀吉の方へ向き直り、先程までの三成との会話を終わらせる。
「欲しいものがあったんですけど、私お金無いから買えなくて…」
あはは、と冗談のノリで言ったななしだったが、その言葉に秀吉と三成が強張った。
「え、なんすか?私なんか変なこと言った?」
「…いや、そうか、しまった。ななし、すまない。」
「私もうっかりしていました…。」
秀吉と三成が同時に、本当に申し訳なさそうにななしへ謝る。
ななしはますます訳がわからず、思わず首を傾げる。
「まって、本当になんの話?」
「お前に、小遣いを渡すのを忘れていた…」
「…………は?!そんなんいらないけど?!」
「「え?」」
今度は男二人が首を傾げた。
堂々たる城の真ん前で、三人が首を傾げる姿はなんとも間抜けだった。
この光景を信長が天主から眺めていたのだが、この三人がそれを知るのはまた後程である。
「だって、働かざる者食うべからずって言うじゃない。」
「なんだそれは」
「だから、世の為に働こうとせず怠けてばっかの人は、食事にありつく資格も贅沢する資格もないってことですよ。」
「ななし様の故郷には、そのような教えがあるのですか」
「立派な心構えだな。」
大の男二人に関心され、ななしは「私の故郷というより、貴殿方がこれから作っていく世がそうなるんですよ」と教えてあげたくなったが、胸の内にしまっておくことにした。
「そこで秀吉さん、私お願いがあるんですけど…」
「……なんだ?」
秀吉のななしを見る目が、関心から警戒へ切り替わった。
疑いはまだ晴れていないらしい。
ななしは苦笑しながら言葉を続ける。
「私、自分のお小遣いを稼ぐ為に、働きたいんだけど。城内で、私に出来る仕事って何かあります?」
「…別にお前が働かなくても、小遣いはやれるが…それはお前としては不本意ってことか。」
「はい。」