【イケメン戦国】Love is not needed.
第4章 その3
「じゃあ、お金が用意できたらまた来るから。その時にこの子を貰うよ。その間に買い手が見つかれば、それで良いから。」
なおも食い下がるななしに、幸はななしがもうここへ来るつもりがないのではないかと思った。
この短時間で、彼はななしを気に入っていた。
なんとなく、ななしにまた来てもらいたいという思いがあった。
そんなことはつゆ知らず、ななしは本当に申し訳ないから受け取れないだけなのだが。
「本当にくるか?」
「うん、約束するよ。」
「なら、取り置きしとく。」
「……ふふっ、わかった。ありがとう。」
「……おうっ」
ななしと交わした小さな約束が、幸の胸を暖かく満たしていく。
彼は照れたように、しかし明るく笑った。
その笑顔がなんだが眩しく、ななしは思わず目を細めた。
「じゃあ、私、そろそろ行くね。」
「ん、またな」
「またね」
立ち去るななしの後ろ姿を、幸はボーッと眺める。
そこへ、1人の青年がななしと入れ替わるように幸の元へやってきた。
「幸」
「…おー、佐助か。」
「…今の人は?」
「客だよ。お前覚えてるか?信長の、本能寺ん時に森の中で会った女だよ。」
幸の言葉に、佐助と呼ばれた青年は勢い良くななしの方へ振り向く。
が、すでにそこに彼女の姿はなかった。
「……そうか」
「どうしたんだよ?」
「いや、何も。それにしても、随分楽しそうだったね。」
「……別に」
目元を赤く染め、ぶっきらぼうに返す幸を見て、佐助は目を見張る。
が、その表情は他人から見れば真顔と変わらないように見える。
ポーカーフェイスのようだ。
「へー、ふーん、ほー」
「なんだよ!」
「いや、信玄様に、幸村にも春が来ましたって伝えなきゃなと思って。」
「はぁ?!そんなんじゃねぇよ!てかあの人にそういうことぜってー言うなよ!絶対ななしを見に来るっていいかねねぇからな!」
「ななしさんっていうんだね。」
「っ!あ、遊びはここまでだ!ほら、行くぞ!」
「はいはい」
幸、もとい、幸村は品物を片付け、佐助と共に城下の町の奥へと消えた。