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【イケメン戦国】Love is not needed.

第4章 その3



商人はまじまじとななしを見たあと、関心したように口を開いた。

「あん時は猪みたいだと思ってたけど、今日はちゃんとしてんだな。」

「ちょ、猪て!」

商人の失礼なもの言いに、ななしは爆笑した。
商人も笑われると思ってなかったのか、照れたようにななしから目をそらした。


「何笑ってんだよ。」

「いや、チョイスが面白いなぁって思って。」

「ちょいす?」

あ、しまった。
思わず現代の言葉が出てしまい、ななしはごまかすように微笑む。

「ううん、なんでもない。それにしても、綺麗な品物だねぇ。」

「そうだろそうだろ。まぁ、俺が選んだもんじゃねぇけどな。」

「え、やっぱり?!」

「やっぱりってなんだ!」

「ぶはっ!」

再びななしが笑い転げる。
商人はますます恥ずかしそうだ。
ななしはひぃひぃ笑ったあと、目にたまった涙を拭いながら言った。

「いや、最初見たときから、なんか君には似合わないなぁと思って」

「うるせぇよ。失礼だなお前。」

顔を赤くさせながら、商人は品物に視線を落とす。
そんな彼を見詰めながら、ななしはなんだか愛くるしい小動物を愛でている気分になった。

「私が猪なら…」

「あ?」

「君は、うり坊だね!」

「なっ!!!」

赤かった顔をさらに真っ赤にさせ、商人は絶句した。

「誰が瓜坊だ!俺には幸っつー名前があんだよ!」

「私もななしっていう名前があるよ。」

「お前みてぇな失礼な女は猪女で充分だ!」

「なら、女の人をいきなり猪呼ばわりする失礼な男はうり坊で充分だねぇ。」

「~~~っ!!」

幸と名のる商人の完敗である。
確かに、猪みたいだ、と先に失礼なことを言ってのけたのは彼の方なので、ななしに対して失礼もなにもない。

「あぁもう、変な女だなっ」

「へへ、良く言われる」

にかっと歯を見せて、無邪気に笑うななし。
幸はそれを見て、更にきまりが悪くなった。

ななしは、ずば抜けての美人、という訳でもないが、親しみやすさのある整った顔立の女だ。
また、今のように屈託なく笑うと、実年齢よりも若く、少女のような笑顔になる。

そんな女にからかわれ、笑われ、狼狽えてる自分。
穴があったら入りたい気持ちだった。


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