【イケメン戦国】Love is not needed.
第4章 その3
「……………欠伸、したからかも。」
「…ふぅん。」
ふぃっと、バツが悪そうにななしは視線を中庭へ戻した。
家康はそれ以上聞くつもりはなく、つられて中庭を眺めた。
沈黙のまましばらく二人でそうしてたが、再び家康が口を開く。
「暇なら、城下にでも行ってこれば?」
「…城下?」
「安土の城下はいろんな街商が来てるから賑わってるし、いい気晴らし……暇潰しになるんじゃない。」
「…へー」
「行くんなら、秀吉さんに言えば許して貰えると思うけど。」
言い終わったあとに、今度は家康がバツが悪くなった。
さすがにお節介が過ぎたか。
普段はしないような親切を働いてしまって、気恥ずかしいような照れくさいような気持ちになり、居心地が悪くなってしまった。
じゃあ。と、足早に去ろうとした時、
「行ってこようかな。ありがとうイエティ。」
「……………ちょっと待ってなにそれ俺のこと?」
聞きなれない間抜けな響きに思わず脚が止まった。
「…他に誰が?」
「誰もいないから聞いたんだよ。」
きょとんと首を傾げるななし。
そんな彼女に家康は先程までの同情が消し飛んだどころか、殺意に近い何かが芽生えていた。
「イエティなんて、家康さん以外に誰を指すのよ。」
「いえ……てぃ?なに?本当に意味がわからない。本当に意味がわからない。」
大事なことなのか、同じことを2回繰り返した。
「あだ名です、あだ名。」
「あだ名…?」
ななしは三成にしたあだ名の説明を家康にもしてみせた。
「………心底くだらない。これ以上無いくらい馬鹿馬鹿しい。」
「三成さんにもつけたんですよ、あだ名。」
「……あいつに?」
三成、という言葉にピクリと反応してしまう。
秀吉と光秀の馬が合わないのと同じように、家康と三成もまた、折り合いが悪いのだ。
といっても、家康が一方的に三成を嫌っており、三成はそれにマッタク気づいていないのだが。
「はい。三成さんはみっつんです。」
「…なんでそんな珍妙な響きばっかりなの。」
「え、可愛くないですか?」
「あんたの感性ほんとおかしい。」
「えー…イエティも可愛いと思うんだけどなぁ。」
雪男の名称だけど。
ななしは心の中でそう付け足した。