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【イケメン戦国】Love is not needed.

第4章 その3



あの軍議から3日後。
ななしは暇をもて余していた。

「やること無さ過ぎてやばい。」

自分の部屋の前の縁台へ腰掛け、意味もなく中庭を眺める。
色づいた木々がとても綺麗で、池には色鮮やかな鯉もいたが、そんな美しい景色ももう既に見飽きていた。
安土に来てから今日まで、中庭を眺めたり、昼寝をしたりと、これといって特に何もしていない日々が続いた。
たった3日でも、飽きるには充分だった。

「あれから武将達とはちょくちょく話すけど、誰も夜伽してくれないし。信長さんに至ってはあれから顔すら見てないわ。」

話が違う。
と、ななしは拗ねた。
何もしていないと、嫌でも思い出してしまう。
恋人と別れた時の情景と、悲しさ、苦しさを。

目頭が熱くなり、ななしは顔を隠すように踞った。

その時、

「何してんの、あんた。」

いつの間にやら、家康がすぐ近くまで来ていたらしい。
不意にかけられた声に思わず、顔を挙げる。

「…あぁ、家康さんかぁ。」

家康といえば、ここ最近はななしと会ってもまともに目も合わせず、彼女が挨拶をしても素っ気なく、そそくさと去っていきあからさまにななしを避けていた。
そんな彼が、何故だか今日は自分からななしへ声をかけた。

「珍しーい。なんか用ですか?」

ななしは嫌味を込めて、「珍しい」を強調した。
(いつも避けるくせに)という意味で。

「…別にあんたに用なんてないけど…踞ってたから、腹でも壊したのかと思っただけ。」

「心配してくれたんですか?意外と優しいんですね。」

からかうように、ななしは彼の目を見て言った。
対して家康は、彼女の言葉を不服に思ったが、それよりも気になることがあった。


「……目元、赤いけど。」


この女には極力関わらないでいよう。
そう誓っていたはずの家康だったが、ななしが縁側で踞っているのを見て、思わず声をかけてしまった。

武将達の前では気丈に振るまい飄々とした態度をとっていた女が、独りの時には寂しそうに物思いにふけっている。
少し、哀れだと思った。

ななしとは状況が大分違うが、過去に人質の経験がある彼は、無意識に昔の自分とななしを重ねて見てしまうところがあるのかもしれない。

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