【イケメン戦国】Love is not needed.
第3章 その2
「では、先程の続きから。昨夜の本能寺にて信長様暗殺を企てた賊についてですが、調査の結果、まだ確証ではありませんが本願寺の元法主である顕如が首謀者かと。」
秀吉が顔を引き締め軍議を再開した。
(あぁ、私が信長さんを助けた時の話してたのか。通りで呼び止められるわけだ。)
対して驚くこともなく、ななしはぼーっと話を聞く。
彼女にとっては、武将達が何を思い何を成し得ようとしているのか心底どうでもよかった。
だがしかし、ふと、昨夜本能寺で信長を助けた後、彼の元から一旦逃げ出し再び捕まる次の日の朝(つまり今日の朝)までに、ここにいる武将達以外の人物にも何人か出会ったことを思い出した。
(あれ、けんにょって…たしか、昨日……)
「けんにょって、大柄で黒髪の、顔に傷がある男の人?」
ななしの一言に、武将達が一気に彼女に視線を集める。
(あ、この反応は…ビンゴかな?)
「なんであんたが、そんなこと知ってるの。」
「私、昨夜会いましたもん。夜道の一人歩きは危険だよーって言われただけですけど。」
「思わぬところで裏がとれたな。」
はぁーっと秀吉が息をはく傍ら、信長がななしに向けてにやりと笑った。
「さっそく御利益があったな。やはり貴様は縁起物だ。」
「そりゃどーもー。」
「ななし、信長様に軽口を叩くな。先程から無礼だぞ。」
「それはそれは、大変失礼致しました。」
申し訳ございませんと、ななしがわざとらしく頭を下げる。
その慇懃無礼な振るまいに秀吉は眉を寄せたが、それ以上は何も言わなかった。
「秀吉、三成、この件は後程俺の部屋で策を詰める。」
「はっ」
秀吉と三成が短く返事をした。
次に、光秀が口を開く。
「では、私からも報告をひとつ。東方に送っていた斥候が妙な噂を拾ってまいりまして。」
「噂…?」
「……越後の龍と甲斐の虎が生きている、と。」
空気が瞬時に張り詰めた。
武将達の表情も厳しさを増す。
(越後の龍と甲斐の虎って、上杉謙信と武田信玄のことか。また有名な武将だなぁ。信長さんと敵対してたっけ?)
現代には戦国ブームというものがあった為か、ななしはテレビやゲーム等で、戦国時代について少しの知識はあった。本当に微々たるものだが。