【イケメン戦国】Love is not needed.
第3章 その2
そんな信長に対しななしは恥ずかしがる様子もなく、一瞬きょとんとした後に艶やかな笑顔を見せた。
「じゃあ、今夜私と夜伽してくぶふぇっ」
ななしの台詞が遮られた。
秀吉が己の羽織を彼女の顔に投げつけたからだ。
「ちょっとー、せっかくお色気攻撃で誘惑しようとしたのにー」
「おっ、おまっ…おまえ!年頃の娘が、なんつー格好を!!」
顔を真っ赤にしてずかずかとななしに歩み寄り、
ななしの手から着物一式を取り上げる。
余程動揺していたのであろう、説教をしながら何故かななしに着付けをし始めた。
素が世話焼きの秀吉にとっては、この奇人変人女を部屋から放り出すということより、早く着物を着せてやるという行為の方が無意識裏にあるようだ。
自分の羽織をななしへ投げたのも、すぐにこの女の裸体を隠してやらねば、という理性が働き慌ててとった行動だった。
「この場に男しか居ないと知ってるだろう!本当に大うつけだなお前!」
「怒りながら着せるなんてけっこう器用っすね、旦那。」
「話をきけ!!」
もはや母親である。
そんな二人の様子に信長は珍しく、くつくつと笑う。
「なんだ、着せちまうのかよ。もうちっと見たかったぜ。」
いつの間にやら、政宗もすぐ横に来ていた。
「もっと見たかったのなら、ぜひ、夜伽を」
「本当おもしれぇなお前、気に入った。」
「なら、夜伽を」
「夜伽夜伽と格好もだらしなければ口もだらしないな!」
ぺしりっ、おでこを叩く良い音がした。
着付けはもう終わっていた。早業なり。
「いてっ…叩かれた!暴力ハンターイ。」
「こっちは視界の暴力受けたんだけど。」
冷たい声色で家康が言い捨てる。
ななしを見る視線も冷たい。
そんな彼に光秀が茶々をいれ始めた。
「と、いうわりには、目元が微かに赤いようだが。」
「っ…光秀さんの気のせいです。」
「どうかな。」
「でなきゃ、見間違いだ。もう黙ってください。」
「ふっ…それは悪かったな。」
やはり家康も、男なのだ。
「ほら、もう着せてやったんだから部屋に戻れ」
呆れ返った秀吉がどっと疲れた顔でななしを促す。
「へいへい、ありがとうございましたー」
ななしが踵を返すと同時に信長が口を開いた。