【イケメン戦国】Love is not needed.
第3章 その2
ななしが広間へ向かっている中、
その広間では…
「信長様、今一度考えをお改めください」
「しつこいぞ、猿」
ななしの件について諦めていた秀吉が、最後の最後にやはり諦めきれなかったのか、なんとか信長を説得しようと必死に切言していた。
「ですが……」
「しつこいと言っている。貴様、この俺に意見するか。」
秀吉のしつこさに機嫌を損ねた信長は、じろりと彼を睨み付ける。
その視線に秀吉の体が一瞬強張った。
「め、滅相もございません…。しかし、しかし信長様…あの女は得体が知れないうえ、己の潔白を証明しようともしなかった。それがどういう意図かはわかりませんが…お側に置くにはあまりにも危険です。」
「俺も秀吉さんに賛成です。なんでここに置くんですか、あんな訳のわからない頭のおかしい女。縁起物って言いますけど、幸運どころか面倒なことしか運んで来ないと思いますよ。」
いつもの無愛想な顔を3倍ほどさらに不貞腐れさせながら、家康も加わる。
それに対し信長は、煩いのがまた増えたか…と、心底面倒くさそうな顔をした。
「俺は気に入ったけどな。あんなこと言う女、今まで見たことねぇし、おもしれぇじゃねぇか。」
「確かに、見ていて当分は飽きないだろうな。」
「ななし様はお着物も珍しかったですものね。」
楽しんでます。
そう顔にありありと書いて、政宗と光秀は信長に加勢した。
三成は、状況を分かっているのかいないのか、とんちんかんな発言をしている。
が、
「うるさい三成。楽観主義のあんたらも黙っててください。」
「光秀、飽きる飽きないの問題じゃない。親方様のこと、織田軍のことを考えろよ。」
スパッと鋭く打ち返され、
彼らはやれやれといった様子で黙ってしまった。
(三成の表情は変わらずニコニコとしている。)
だが、いくら秀吉達が政宗や光秀を黙らせようと、いくら秀吉達が信長を説き伏せようと、信長の考えは変わらない。
パンッと、信長が自分自身の膝を叩き、皆の注意をこちらに向けた。
「ななしはこの城へ置く。異論は認めん。」
この話はもうこれで終いだと、言葉にせずとも伝わる凄みを帯びた声色。
今度こそ秀吉は折れ、頭役を失った家康もまた折れるしかなくなったのだった。