第1章 1
「うわ・・・」
恵梨はそう言うと言葉を失くし、グッとブレーキを踏んだ。
車は静かに停車した。
「スゴい・・・。スゴいキレイですね!!」
ハンドルを握ったまま、恵梨は目の前の景色に見とれている。
目の前に広がる景色。
───それは、静かに水を湛えた湖。
周りには木が生い茂り、湖面がその木々を写し出している。
更にまだ太陽の光が差し込まずうっすらと霧がかかっていて、それがまた何とも幻想的な景色だった。
景色に見とれていた恵梨は、ハッと我に返ると急いでハンドブレーキをかけてエンジンを切り、シートベルトを外して外に出た。
そして大きく伸びをする。
笑顔で振り向いた恵梨は、遅れて助手席から降りた俺に言った。
「shujiさん、ありがとうございました!!」
「ん?」
「こんなにキレイなところ、私の地元にも無いです!来られて良かったです・・・ありがとうございました」
そう言って恵梨は頭を下げた。
俺はそんな恵梨の姿にフッと笑うと、後部座席のドアを開けた。
「別に俺は何もしとらん。恵梨が頑張ったんやないか」
その言葉に、恵梨は恥ずかしそうに笑った。
俺は後部座席をガサガサと漁りながら言った。
「恵梨、腹減ったやろ。朝飯にするで」
取り出したのは、中くらいのバスケット。
「それは・・・?」
恵梨が目を丸くして尋ねる。
俺はニヤリと笑った。
「kiyoのウチからパクってきたサンドイッチや」
恵梨は更に目を丸くすると、声を出して笑い始めた。
──こんなに清々しい朝を、こんな風にキラキラした笑顔と過ごせるなんて、とびきりの贅沢やな。
次の『教習』はいつにしよか、恵梨───。